介護の現場において、利用者の方との間に信頼関係を築くことは、質の高いケアを提供する上で欠かせない要素だ。そして、その信頼関係を築くための最も重要なコミュニケーションスキルの一つが「傾聴」である。傾聴とは、ただ単に相手の言葉を聞くだけでなく、その言葉の裏にある感情や思いを読み取ろうとする、積極的な聴き方のことだ。
傾聴の姿勢を示すためには、まず、身体的な向き合いが大切である。利用者の方と顔を向き合い、穏やかな目線で、しっかりと耳を傾けよう。相づちを打つ、頷くなどの反応を示すことも、相手への共感と理解を示す効果的な方法だ。
次に、相手の言葉に耳を傾けるだけでなく、その言葉の裏にある感情に意識を向けよう。「今日は少し元気がないな」「何か不安なことがあるのかな」など、言葉以外のサインを読み取ろうとすることで、より深いレベルでのコミュニケーションが可能になる。
もし、利用者の方が自分の気持ちをうまく言葉にできない場合は、無理に聞き出そうとするのではなく、「何かあったのですか?」「話せる範囲で結構ですので…」など、相手に寄り添う姿勢を示すことが大切だ。そして、話してくれたことに対しては、「お話してくれてありがとうございます」「よく分かります」など、共感の言葉を伝えよう。
信頼関係は、一朝一夕に築けるものではない。日々のコミュニケーションの中で、傾聴の姿勢を大切にし、相手と心を通わせる努力を続けることが、揺るぎない信頼関係へと繋がっていくはずだ。